深い木の葉を映す
青い川面を滑る
朝もやの晴れるころ
見渡そう、遠くまで
小さく切り取った
へさきの上
少し目を閉じて
水の色に染まる
露に濡れた足元
庭の片隅
振り返る時にすべては
鮮やかに
流されるままに
たどり着いた場所でも
硬い種は
土に根を生やさない
舫いから解き放ち
宙に浮きたつアゲハ
薄い波紋を描き
今は岸を離れる
小さく渦巻いた
瀬を乗り切って
一人に飽いたら
きっと空を見上げる
ほころびを隠して
ひたすら舞う
いつもこの船は
そんなふうに
さまよう
足早に過ぎてゆく
目の前の日々
夢見るだけの季節が
終わるとき
絶え間ない風に
さらされる石でいたい
雨の粒も
肌で感じていたい
深い木の葉を映す
青い川面を滑る
朝もやの晴れるころ
開けた海へと続く
波の白さに気づく
そしてまた明日に近づく
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