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月のある構成
Composition with the Moon

by 摺本拓也

流れ去る思念の薄色
かすかな匂い残して
ゆらりと闇に溶ける

懐かしむひと時に
空を仰いで
ぼんやりと眺める
一期一会の雲

物憂げな左手は
虹を生まない
目を閉じて数える
宵の不可思議

浅い眠りの中
思いは遥か彼方へ
粗い熱を冷ました
無音の風

包み込む気配の艶やか
月明りの語り始める時を待つ
柔らかな光の静謐

感じる、もののあはれ
二度とないひらめき
生まれる、生まれる

縫い代の典雅
軒下に立つ
深い陶酔の際に
はねた髪飾り
何を思う


実を結ぶことのない
あだ花の苑
朽ち果てるときには
火影ほのかに

不意に息をのんで
見かえす木々のその奥
ひらりかわす木の葉に
映っている
秘めていた強さが

流れ去る思念の薄色
月明りの語り聞かせる声を聴く
引き寄せる力の鮮烈

今また、もののあはれ
二度とない時間を
生きてる、生きてる
絶え間なく移る浮世で

Copyright Surimoto 2018

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