流れ去る思念の薄色
かすかな匂い残して
ゆらりと闇に溶ける
懐かしむひと時に
空を仰いで
ぼんやりと眺める
一期一会の雲
物憂げな左手は
虹を生まない
目を閉じて数える
宵の不可思議
浅い眠りの中
思いは遥か彼方へ
粗い熱を冷ました
無音の風
包み込む気配の艶やか
月明りの語り始める時を待つ
柔らかな光の静謐
感じる、もののあはれ
二度とないひらめき
生まれる、生まれる
縫い代の典雅
軒下に立つ
深い陶酔の際に
はねた髪飾り
何を思う
実を結ぶことのない
あだ花の苑
朽ち果てるときには
火影ほのかに
不意に息をのんで
見かえす木々のその奥
ひらりかわす木の葉に
映っている
秘めていた強さが
流れ去る思念の薄色
月明りの語り聞かせる声を聴く
引き寄せる力の鮮烈
今また、もののあはれ
二度とない時間を
生きてる、生きてる
絶え間なく移る浮世で
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